top of page

≪随筆≫ ロンドン紀行:ハンプトンコート~リッチモンド

 還暦記念に夫婦で初めてロンドンを訪れました。西欧にあこがれる小生と、シャーロック・ホームズに恋する妻はイングリッシュ・ガーデンにも関心があり、かつ、体調・天候に合わせてゆっくりしたい願いから、5連泊、自由設計の旅としました。大英博物館界隈にあるホテル(ロイヤル・ナショナル)は地下鉄ピカデリー線のラッセルスクェア駅まで徒歩3分。ここを選んだ理由は、市内移動に至便で、ピカデリー線がヒースロー空港と直結していることでした。事前学習はインターネットを活用し、今日のことゆえ、詳細な地図、鉄道・地下鉄の路線・乗換を含む所要時間など、多種多様の情報が入手出来ました。

陽光あふれる朝のグリーンパーク(左上)、バッキンガム宮殿前(右上)、セント・ジェームズ公園内のイングリッシュガーデン(左下)、ウェストミンスター寺院の横、観光用2階建バスとビッグ・ベン(右下)

 2009年9月27日(日)は快晴の予報でした。前日夕方にロンドンに着いた翌朝、思いがけず快調に目覚めた妻の了解を得て、予定を変更し、朝食後、早めに行動を開始。ホテルを8時過ぎに発ち、グリーンパーク駅で下車し、陽光を浴びる木立の中、リスと戯れつつ、バッキンガム宮殿まで散策。ゆっくりしたひと時の後、東隣のセント・ジェームズパークへ移動。水鳥が戯れる池があり、いくつかのイングリッシュ・ガーデンが点在しています。東に向けて歩いた端は、外務省、首相官邸など、日本での永田町界隈。ウェストミンスター寺院、ビッグベンを仰ぎ見つつ、テムズ川を渡り、国会議事堂とビッグ・ベンを背景に絵葉書調での記念写真。北側至近には新名所、完成当時世界一の大観覧車“ロンドン・アイ”があります。10時の始業に合わせた約1時間半の穏やかな散策でした。

ロンドン・アイ(左上)、国会議事堂とビッグ・ベン(右上)、立って国会議事堂方面を撮る人(左下)、テムズ川に映る影と観光ボート(右下)

 ゆっくりと約30分で回転するロンドン・アイで市内の名所を俯瞰した後、東隣にあるウォタルー駅へ。ユーレイル・パスで西欧を巡る旅への憧れを今尚抱き続けている鉄道好きの小生ですが、3回目のロンドンで初めて実現した電車での郊外探訪です。南西方向に位置するハンプトン・コート駅に向かいました。女帝エリザベスI世の父であるイングランド王ヘンリーVIII世ゆかりの宮殿、広大な公園と庭園があることからの訪問です。
 ターミナルである同駅を出てすぐのロンドンの上流、川幅の狭まったテムズ川に架かる橋に立つと宮殿は目の前。宮殿、公園等の情報も“Hampton Court Palace, London, UK”で検索し、事前学習して臨みました。
 日本と異なり日曜日に休むレストランが多いのですが、宮殿内も休みとの情報を得ての出国であり、ウォタルー駅の売店でパン・飲み物類を購入して電車に乗りました。テムズ川の土手に座し、行き交うボート、白鳥などの水鳥を見つつ、ピクニック気分でのランチでした。ツアーではなく、自由旅行ゆえの利点です。

テムズ川(左上)、ハンプトン・コート宮殿と潮位計(右上)、フランス式庭園構成とイングリッシュガーデンの植栽(下)、この日、ジョギング大会があった広大な公園(右下)

 この日の行程の目玉は、実は、“ロンドン郊外のテムズ川をボートで移動すること”で、最初に、宮殿横の船着き場で出発時刻を確認し、乗船券を求めた次第でした。ネットで得た時刻と異なっており、正解でした。乗船券を購入後、出発時刻を逆算し、宮殿、公園、庭園をのんびりと巡りました。

桟橋に着く、乗船したボート(左上)、家族連れのカヤックなど(右上)、ロックの上流側水門が開きます。(左下)、水門から上流に出てきたボート ~ 我々は待機中(右下)

 ロンドン中心部のボート観光は、この十数年で盛んになり、路線、便数が増えています。が、いわゆる大ロンドンの南西端に位置するハンプトン・コートからリッチモンドまで、約1時間を要する便は1日数便で、海外の観光客は稀有といえます。
 翌日得た情報で、「このボートは公共交通便であり、団体観光ツアー客には出していない」とのことでした。情報を確認したのは、体験したこのボート下りが、観光コースとしても、極めて秀逸であったがためです。日本では皆無と認識していますが、途中には、“lock”こと、川の水位を調節する水門(閘門 lock gate)があり、いわば関所を通過するのですが、これも「ロンドっ子に親しまれている」由です。

ボートは“Teddington lock”に進入(左上)、管理小屋(右上)、lock内の水位が(2m以上!)下がり、小屋が高くなり(左下)、下流側の水門が開きました。(右下)

 NHKの映像では見るのですが、河川や多くの運河にある水門を通過し、例えば、パリからベルリン、モスクワまででもボートで移動できるのが欧州です。山が無く、丘陵地に留まるイングランドをゆったりと流れるテムズ川ですが、水門を設けることで、さらにゆったりとした流れとして、水量を確保し水運に活かしているとの“体験研修”をしました。
 高級住宅地であるリッチモンドまで、約1時間の船旅は、緑が豊かな環境の中、白鳥、鴨、鴎、鷭など多くの水鳥たち、そして、日曜日の午後とあって、多様な(高級)ボート、ヨット、家族でのカヤックや湖岸道路でのサイクリング、散策、ベンチで憩う人たちなど、異次元の恵まれたひと時でした。

テムズ川のヨット/高台の館は帰国後調べたら何と!高級老人ホーム(左上)、Richmond high hill から見るテムズ川(右上)、ゆっくりと憩えるテラス・ガーデン(左下)、日曜日夕刻、リッチモンドの賑わい(右下)

 リッチモンドでボートを降りて、しばしの散策。ハイヒル(high hill)路を歩き、テムズ川を俯瞰する高台から転進し、テラス・ガーデンへ。テムズ川までの傾斜地を活かした木々の多い公園内にイングリッシュ・ガーデンが点在しているテラス・ガーデン内には水着姿で日光浴をする方も・・・。予想以上に上質の環境でした。
 テムズ川沿いの散策路をゆっくりと戻り、市街を歩き駅へ。リッチモンドからは市内中心部への地下鉄路線もありますが、帰路も地上鉄道を用いて、ロンドン・ウォタルー駅に戻りました。
 ミュージカル映画「マイ・フェア・レディ」の冒頭、ロイヤル・オペラでの観劇を終えたお客にイライザが花を売るシーンでお馴染みのコヴェント・ガーデンに地下鉄で移動し、大道芸人の人だかりなどで賑わう界隈を歩き、インド料理店でのディナー。難解なメニューを、ジェスチャー交じりでウェーターイと凌いで、乾杯!・・・御馳走様。夕食後、再び、テムズ川に出て、ライトアップされて回るロンドン・アイを見た後に地下鉄で移動し、ホテルに着いたのは21時過ぎ、満喫し得た感謝至極の一日でした。

鳥取県東部医師会報 No.391 随筆[ロンドン紀行:ハンプトンコート~リッチモンド]2010年1月号 p.41-43 掲載の原稿

2020/8/28 up

bottom of page