【公園・庭園 2】 〔小児科医の書庫〕
≪随筆≫ パリに魅せられて(8)ブローニュの森 : 孔雀と戯れる公園
2013年『凱旋門賞』当日のロンシャン競馬場(上左)では日本語の馬券売り場(上右)も。[きずな]の横断幕を掲げた応援コーナー(中)。至近地にあるバガテル公園の入り口(下)
◇ 2013年10月、パリに着いた翌日は、第一日曜日。
出国前に愛好家の医局仲間から、自身聞き覚えのある「ロンシャン競馬場」の話題が出た。小生が、初めて、ブローニュの森(にあるバガテル公園)を探訪すると会話したことが発端だった。ネットで調べた。同競馬場はブローニュの森の南端にあり、10月第一日曜日にレースが多々あり、メインが世界的に著名・重要な『凱旋門賞』で、武 豊が騎手の[きずな]と[オルフェーブル]の日本馬2頭の出場などを確認した。(結果は武4位とオ.2位で、日本馬の優勝は成らず)
◇ モンソー公園の立派な北門を出て、メトロM2に乗車し凱旋門でM1に乗り継いだ。車内は(甲子園球場に向かう虎ファンと分かるがごとくの)混雑で、ド素人ながら『凱旋門賞』の雰囲気に早浸った。
◇ 『凱旋門賞』を案内するポルト・マイヨ(Place de la porte Maillot)駅で、多くのファン共々下車。人の流れに沿って、地上に上がるとロータリーがあり、バス停が視界に入った。迷うことはない。
路線バス244の案内を確認後、一方、小旗で飾られ無料ピストンバスと分かるバスが連なっており、発車間近のバスに乗車した。バスは満員のにぎわいで、吊皮を持っての移動。ブローニュの森を南西方向に貫く車道は左右に木々が連なり、やがて開けたら、素人目にも「競馬場だ!」と分かる会場と『凱旋門賞』の大看板があり、小生も心が弾んだ。下車し、流れに沿って歩く。
◇ チケットを買い、土産を念頭に、フリーのプログラムを複数枚手にして、入場。多くのフラッグ、花々で飾られた通路、中東と分かる民族衣装のステキな女性・・・。カタールがメインスポンサーで、彼女らはキャンペーン・ガールと分かった。“先着・・名様”と言ったところだろうが、彼女からカタールのロゴが入ったキャップを二人がもらい、かぶって、彼女たちと共に記念写真も!お土産を意識して、公式プログラム等を購入し、華やかなレース開始前の雰囲気を体感した。
◇ 1時間弱滞在し、雰囲気に浸った後、レース開始前、人の流れに反して、競馬場を後にした。タクシーを拾い、本来目的地のバガテル公園へ・・・。
ブローニュの森にあるバガテル公園の薔薇園では、多種多様な秋薔薇に囲まれた
◇ 智頭病院に異動後、山野草に関心を抱くようになった。山野草のみならず、“雑草”の可愛い花を含めて、見て、撮ることが、自己評価で趣味と言えるほどになった。智頭町内に自生している山野草を小生は撮り、彼女はそっと採り、病院敷地内にある宿舎の庭に植えて・・・と、二人の関心は若干異なったが、公園・庭園を巡り、木々・花々を愛でる関心は一致した。
一方、中国山地に囲まれている智頭町には、トレッキングコース、遊歩道が整備されている。例えば、病院から南側に仰ぎ見る至近にある篭山へのトレッキングは、町主催で毎年、初秋の定番である。いつしか、時間を見出して、歩くことも趣味となった。
品評会で賞を得たバラなどのコーナー(上)。モーツァルトのオペラ・フィガロの結婚を想起した(下)
◇ パリでも同様で、天候等に恵まれれば、出かけて、日本と異なる環境に身を委ねることになる。 バガテル公園自体、素晴らしい環境だが、とくに薔薇園は、歴史ある国際バラコンクールの入賞株が維持され、表記してある。モーツァルトの「フィガロの結婚」は、自身が人生をかけて“研修”を繰り返すに値する歌劇だが、この“フィガロ”と名付けられたマダム(薔薇)を記念に撮った。 日曜日の13時台の訪問だったが、昼食時間帯とは言え、薔薇園には幼児連れや若い女性など、数人に留まり、意外に思えた。非常に良質な環境であるにも関わらず、観光地化していない証で、訪問した立場からすれば有り難い限りでした。◇ なお、ガイドブックガイドブックやHP検索では春薔薇のシーズンがベストとして記されていたが、秋薔薇のシーズンも秀逸で、至る所に季節の花々が咲き誇っている。お勧めの公園です。
園内のレストラン・バガテルのテラス席に孔雀が寄って来た。パンを手渡しし、遊んでもらった
◇ バガテル公園は南北に長い。ロンシャン競馬場経由で訪れた東側の門から入り、時計回りに歩き、薔薇園を経由し、西側の庭園が続くゾーンを北上した。西側門にほど近い処にレストラン・バガテルがあり、木々の木陰の下、空いていた席に座した。心地良い・・・。
◇ 小生は朝、十二分に食べる。(病院宿直明けの昼の検食は例外として)1日2回食が定着して、30年以上になる。二人での旅行中は、彼女の体調・お腹の具合が優先で、休息し、飲食している。必然と、注文する料理は、彼女主体で、残り物を小生が処理するのが定番です。とはいえ、一人前のサラダ、料理は日本では二人分以上と思える量があるので十二分ですが・・・。飲料は各々が注文します。小生はハウスワイン主体で、彼女は有料の水が定番で、価格は大差ない。
掌のパンを孔雀が食べる:日本ではあり得ない(上)。何故か、遊べない彼女(下)
◇ バガテル公公園は、孔雀が放し飼いにされていることで著名です。実際、ワインを飲みながら、パンをちぎっていた小生の様子をうかがいながらに孔雀が近づいて来ました。手のひらに置いたパンを啄むほどに慣れているのです。小生同様にと、彼女をうながしたら、肩を退いてしまい、アウト!
◇ カヤックで湖山川・湖山池を漕いでいると、サギやカモ類は、極例外を除いて、10~20mで飛び立って逃げるのが通例だが、ロンドンではガンやカモ類が、小生の存在を無視するかの如くに、逃げることがない。例外は、犬であり、水鳥が逃げるが逃げる機会を目にする。ウィーンの市民公園やバガテル公園では、1m以内に接近するとやっと逃げる水鳥がいる。日本とは大きく異なる体験に感慨を抱くことになる。
バガテル公園内には至る所に孔雀が居た(上・下)。雁の糞の多さには彼女はSOS!も(中)
◇ レストランで約1時間過ごした後、再び、北側に歩み、時計回りに東門をめざした。この間も、木々、イングリッシュガーデン風の花々の植込みと共に、孔雀との出会いを繰り返し、餌を啄むガンの群れにも遭遇した。先に歩いていた彼女が、両肘を曲げ、手のひらを天に向け、困惑した表情を示しているのに気づいた。要するに、ガンの糞が多いことに驚いてのことだったが、踏み石が点在する場所で小生も確認した。30cm径の踏み石には糞が目立っていた。
◇ 写真記録を見ると、バガテル公園には約3時間の滞在だった。季節を変えて、再訪したい公園です。そう、春薔薇の頃に・・・。10月の第一日曜日を含めた旅程も愛好家にはオススメ!
鳥取県東部医師会報 No.414 随筆[パリに魅せられて(8)ブローニュの森 : 孔雀と戯れる公園]2014年11月号 p.46-48 掲載の原稿
「全くの偶然だったが、[凱旋門賞]当日にロンシャン競馬場を訪れ、雰囲気を味わった。観衆が詰めかける中、記念品を得た後、開始前に会場を経ち、同じブローニュの森にあるバラ園と孔雀で著名なバガテル公園を散策した」と、急患診療所で書いた。
2020/9/9 up